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シカンダ・中興噴水広場。
そこは、このシカンダという城下町の中央に位置する、文字通り噴水広場である。
シルヴィーは騎士団領を抜けて、食事処を探すために市場に近い、この噴水広場まで来ていた。
この町は、このシカンダという国の首都であり、海に面している事もあってか非常にモノの流通が激しい。
故に、海に近づけば近づくほど料理店なども多いのである。
シカンダ自身、この中央広場を中心とし、東にスラム街、南に港、兼市場、西に住宅街、北に王城と展開している。
また、住宅街は王城に近づけば近づく程、身分の高い者達、港に近づけば近づくほど、身分の低い物と成っている。
どのような国にも、それが王制という立場を取っている以上は貧困の差は避けられる物ではないのである。
(さて・・・どこに行きましょう・・・。)
そんな事を考えながら歩いていると、噴水の前に大きな人だかりが出来ているのに気づいた。
(・・・何事です?)
シルヴィーは何となくその人だかりが気になり近づいてみることにした。
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近づくと予想よりも人が多くて、中心でなにが起きているのか把握することは出来なかった。
「これは何事です?」
シルヴィーは近くに居た青年に話し掛ける。
青年は相当興奮しているのか、シルヴィーの方には振り向かずに答える
「吟遊詩人だよ!次で最後みたいだけど・・・!!」
息荒く答えると、青年はもっと近くで見たいのか、人を掻き分け前の方へ突き進んでいった。
シルヴィーはそんな青年の姿を見送りながら
(詩人ですか・・・祭の季節でもないのに珍しいですね・・・。)
と考え
(ものはついでですね、少し見ていきましょう。)
シルヴィーは「すまない、通してください。」と言いながら人だかりを抜けて最前列へと向かった。
やがて、人だかりを抜けるとそこには一人の男性が居た。
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噴水の縁に腰掛け、よっぽど大事にしているのか、それとも新品なのか良く分からない竪琴を調律していた。
(・・・アレは・・・相当使い込んでいます。)
シルヴィーはやや遠目ではあるが、それが分かった。
剣や刀という物は使い込めば使い込むほど、その握っている部分が磨り減ったり跡が出来たりしてくる。
他の者はどうかは知らないが、シルヴィーには、いつもそこを持って音を奏でているであろう跡が見て取れた。
それを調律している詩人は帽子で顔は見えないが、口元が緩み、微笑んでいるように見えた。
それを実ながらシルヴィーは
(・・・楽しそうに調律をしていますね。)
という感想をだした。
やがて調律が終わったのか、おもむろに立ち上がる。
たったそれだけの動作なのに、それはとても洗練された、一種の舞のように見えた。
周りの人たちが一気に騒ぎ始める、シルヴィーが「よっぽど楽しみなのですね。」等と考えていると、詩人は左手で帽子を取り、それを胸に抱えお辞儀をした、いわゆる丁寧な挨拶だった。
帽子からこぼれ落ちた、少し長めの髪は限りなく白に近い金色をしていた、女のものかと見間違うほどそれは、手入れをしているのか長いにもかかわらず高貴な印象を与えていた。
顔をあげる、顔つきは非常に整っており、その微笑が人を惹きつける何かをかもし出していた。
・・・が、そんな事よりも違うことがシルヴィーは気になっていた。
(・・・盲目・・・?・・・それとも、単なる細目?・・・どっちにしても、目を瞑っているようにしか見えません・・・)
くだらない事かも知れないが、シルヴィーが一番気になっているのはそんなことだった。
詩人は再び帽子をかぶると、竪琴を鳴らした。
『――――――――――――――――。』
綺麗な『音』が包む・・・否、その程度ではすまなかった。
人々の喧騒が、文字通り『消えた』
シルヴィーはその詩人の奏で出した音が、今この空間全てを支配しているような・・・そんな錯覚を受けていた。
「・・・皆様、大変お待たせ致しました。」
男の声が、その空間に響き渡る。
勇ましく荒々しい声でも、女のようになよなよとした声でもない。
それは・・・そう、とても澄んだ・・・まるで流水の様な綺麗な声だった。
「今から詩いますは、悲劇にして喜劇、とあるピエロの詩で御座います。」
ものがたり
そう言うと竪琴が再び、詩人の手によって奏でられ始めた・・・。
ニ幕 了
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性格は基本的に大らかな性格のへたれです。
名前に関しては偽名です。