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『ボフッ!』
ドアを開けて次に起きた事は、小さな影が自分の胸に飛び込んできたことである。
当然の事ながら、あまりの不意打ちにシルヴィーはよろめき
「わっ・・・きゃ!」
『ドン!!』
買ってきたパンを落とさないようにバランスをとったが、そっちに気が行ってしまった為か、尻餅をついてしまった。
パンは落ちつずにすんだが、体に走る鈍痛にシルヴィーは顔をゆがめた。
「っ・・・いたた・・・。」
片手でお尻をさすり、小さな影を見やるとシルヴィーは口を開いた。
「こら、『ジュリ』!?いきなり飛びついたら危ないって、いつも言ってるでしょう?」
小さな影の正体はジュリという名の小さな女の子だった。
ジュリはシルヴィーの顔を見上げると、ニカッと笑い、さらに抱きついてきた。
「えへへ!お姉ちゃんお帰りなさい!!」
反省の色は全く無しですか・・・と思わずこめかみに手を当てるシルヴィー。
「ああ!!ジュリばっかずるい!!」
尻餅を着いたシルヴィーに、更なる負荷が重なる。
思わず「うわっ」と声を出した。
男の子はジュリの上から覆い被さるようにシルヴィーに抱きつくが、むしろそれは乗っかっているといった方が正しいかもしれない。
「うぁ!?ちょっ・・・ウィル、重いよ!?」
「え~!だってジュリばっかずるいじゃんか!?」
自分の上に乗っかる形で、喧嘩をし始める小さな子ども二人を見ながら、シルヴィーは溜息をついた。
(やれやれ・・・またですか。)
心の中でぼやくと、自分の目の前に居る二人の子どもを見る。
自分の家に住まう、『五人』の子どものうち、最年少の二人組み。
年が近いのもあってか、二人は仲が良く、その分よく喧嘩もするし、すぐ仲直りもする・・・そんな二人だった。
「・・・さて、と。」
シルヴィーはジュリとウィルを自分から降ろし、立たせた。
「シルルとウェイクとレイドは?」
他、三人の事を二人に聞くと、ウィルが手を上げた。
その姿、まるで先生と生徒のようでもある。
「シルル姉ちゃんは裏に居る、ウェイク兄とレイド兄は仕事からまだ帰ってない。」
「ふむ・・・では、もうすぐ帰ってきますね・・・よし、ご飯を作ります、手伝ってくれますか?」
ジュリとウィルは互いに顔を見合わせると「うん」と頷き
「「りょーかい♪」」
揃って、シルヴィーに敬礼をした。
その姿が何故か面白く見えて、シルヴィーはクスリと吹き出した。
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シルヴィーは鎧を脱ぎ、壁にかけ普段着に着替えると台所にて、ジュリとウィルが水で洗った野菜を包丁で綺麗に刻んでいく。
しばらくすると、洗濯物をたたんでいたのか、シルルがやってきた。
「あ、お姉ちゃんお帰りなさい!」
シルルはシルヴィーに気づくや否や、笑顔で挨拶し駆け寄ってきた。
シルヴィーは首だけそちらへ向ける
「ええ、ただいま。」
「夕ご飯作ってるんだ、私も手伝うけど何か出来ること在る?」
「では、スープの方の味付けをお願いします。」
「ん、わかった。」
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夕ご飯の準備もほぼ終り、後は盛り付けを残すのみとなった頃、最後の二人が帰ってきた。
「ただいま、姉さん。」
「うへぇ~・・・つっかれた・・・。」
物腰穏やかなレイドと面倒臭がりなウェイクの帰還だった。
二人は港で働いており、今日のような時間に変えることが多い。
「ウェイク兄ちゃん・・・じじくさ~い・・・。」
「あ、あにおぅ!!」
そんなウェイクをからかうジュリ、そしてそれに反応するウェイク
「えへへ!ココまでおいで~!!」
「こんの餓鬼~!!」
年相応の子どものようにウェイクも走るジュリを追い掛け回す。
部屋の中をバタバタと走り回る子どもを見ながらシルヴィーは
「こら、室内で喧嘩しない。」
と、母親が子を叱るように言った。
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深夜、子供達が寝つくと、シルヴィーはお茶をいれ一息ついた。
「・・・ふぅ。」
(今日も一日・・・無事に過ごせました。)
お茶を一口すすり、お茶請けに置く。
『カチャ・・・』
陶器と陶器が当たる音が夜中に響く。
その闇の中に一人で居ると、どうしても心が竦む。
(一人・・・ですか・・・。)
常に傍に置いてある刀を手に取り、昼間を思い出す。
(守るべき物・・・ですか・・・・。)
シルヴィーの頭によぎるのは、今もこの家で安らかに過ごす子供達の姿。
(・・・最初は・・・レイド・・でしたね。)
このシルヴィーの家に住んでいる5人の子ども達は、シルヴィーの家族でもなければ、その子達が兄弟という訳でもない。
・・・何の血の繋がりもない、赤の他人である。
最初にきたのはレイド・・・それはつまり、シルヴィーが57番目に切り殺した者の息子という意味でもある・・・。
その親の名前が『ダグラス』という名だったということも・・・シルヴィーは良く覚えている・・・。
思い返せば・・・初めて人を切り殺したのは、今よりもずっと前だと思い出せた・・・。
第七幕 了
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性格は基本的に大らかな性格のへたれです。
名前に関しては偽名です。