忍者ブログ
ここは自分の好きな事をダラダラと物申すブログです、不定期ですが(苦笑)
[106]  [105]  [104]  [103]  [102]  [101]  [100]  [99]  [98
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『ボフッ!』

ドアを開けて次に起きた事は、小さな影が自分の胸に飛び込んできたことである。
当然の事ながら、あまりの不意打ちにシルヴィーはよろめき

「わっ・・・きゃ!」

『ドン!!』

買ってきたパンを落とさないようにバランスをとったが、そっちに気が行ってしまった為か、尻餅をついてしまった。
パンは落ちつずにすんだが、体に走る鈍痛にシルヴィーは顔をゆがめた。

「っ・・・いたた・・・。」

片手でお尻をさすり、小さな影を見やるとシルヴィーは口を開いた。

「こら、『ジュリ』!?いきなり飛びついたら危ないって、いつも言ってるでしょう?」

小さな影の正体はジュリという名の小さな女の子だった。
ジュリはシルヴィーの顔を見上げると、ニカッと笑い、さらに抱きついてきた。

「えへへ!お姉ちゃんお帰りなさい!!」

反省の色は全く無しですか・・・と思わずこめかみに手を当てるシルヴィー。

「ああ!!ジュリばっかずるい!!」

尻餅を着いたシルヴィーに、更なる負荷が重なる。
思わず「うわっ」と声を出した。
男の子はジュリの上から覆い被さるようにシルヴィーに抱きつくが、むしろそれは乗っかっているといった方が正しいかもしれない。

「うぁ!?ちょっ・・・ウィル、重いよ!?」

「え~!だってジュリばっかずるいじゃんか!?」

自分の上に乗っかる形で、喧嘩をし始める小さな子ども二人を見ながら、シルヴィーは溜息をついた。

(やれやれ・・・またですか。)

心の中でぼやくと、自分の目の前に居る二人の子どもを見る。
自分の家に住まう、『五人』の子どものうち、最年少の二人組み。
年が近いのもあってか、二人は仲が良く、その分よく喧嘩もするし、すぐ仲直りもする・・・そんな二人だった。

「・・・さて、と。」

シルヴィーはジュリとウィルを自分から降ろし、立たせた。

「シルルとウェイクとレイドは?」

他、三人の事を二人に聞くと、ウィルが手を上げた。
その姿、まるで先生と生徒のようでもある。

「シルル姉ちゃんは裏に居る、ウェイク兄とレイド兄は仕事からまだ帰ってない。」

「ふむ・・・では、もうすぐ帰ってきますね・・・よし、ご飯を作ります、手伝ってくれますか?」

ジュリとウィルは互いに顔を見合わせると「うん」と頷き

「「りょーかい♪」」

揃って、シルヴィーに敬礼をした。
その姿が何故か面白く見えて、シルヴィーはクスリと吹き出した。

                 ・
                 ・
                 ・

シルヴィーは鎧を脱ぎ、壁にかけ普段着に着替えると台所にて、ジュリとウィルが水で洗った野菜を包丁で綺麗に刻んでいく。
しばらくすると、洗濯物をたたんでいたのか、シルルがやってきた。

「あ、お姉ちゃんお帰りなさい!」

シルルはシルヴィーに気づくや否や、笑顔で挨拶し駆け寄ってきた。
シルヴィーは首だけそちらへ向ける

「ええ、ただいま。」

「夕ご飯作ってるんだ、私も手伝うけど何か出来ること在る?」

「では、スープの方の味付けをお願いします。」

「ん、わかった。」

                 ・
                 ・
                 ・

夕ご飯の準備もほぼ終り、後は盛り付けを残すのみとなった頃、最後の二人が帰ってきた。

「ただいま、姉さん。」

「うへぇ~・・・つっかれた・・・。」

物腰穏やかなレイドと面倒臭がりなウェイクの帰還だった。
二人は港で働いており、今日のような時間に変えることが多い。

「ウェイク兄ちゃん・・・じじくさ~い・・・。」

「あ、あにおぅ!!」

そんなウェイクをからかうジュリ、そしてそれに反応するウェイク

「えへへ!ココまでおいで~!!」

「こんの餓鬼~!!」

年相応の子どものようにウェイクも走るジュリを追い掛け回す。
部屋の中をバタバタと走り回る子どもを見ながらシルヴィーは

「こら、室内で喧嘩しない。」

と、母親が子を叱るように言った。

                 ・
                 ・
                 ・

深夜、子供達が寝つくと、シルヴィーはお茶をいれ一息ついた。

「・・・ふぅ。」

(今日も一日・・・無事に過ごせました。)

お茶を一口すすり、お茶請けに置く。

『カチャ・・・』

陶器と陶器が当たる音が夜中に響く。
その闇の中に一人で居ると、どうしても心が竦む。

(一人・・・ですか・・・。)

常に傍に置いてある刀を手に取り、昼間を思い出す。

(守るべき物・・・ですか・・・・。)

シルヴィーの頭によぎるのは、今もこの家で安らかに過ごす子供達の姿。

(・・・最初は・・・レイド・・でしたね。)

このシルヴィーの家に住んでいる5人の子ども達は、シルヴィーの家族でもなければ、その子達が兄弟という訳でもない。
・・・何の血の繋がりもない、赤の他人である。
最初にきたのはレイド・・・それはつまり、シルヴィーが57番目に切り殺した者の息子という意味でもある・・・。
その親の名前が『ダグラス』という名だったということも・・・シルヴィーは良く覚えている・・・。
思い返せば・・・初めて人を切り殺したのは、今よりもずっと前だと思い出せた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 


第七幕       了

PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
E-mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ポイント
カレンダー
11 2024/12 01
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
フリーエリア
最新CM
最新TB
プロフィール
HN:
ショウソウ ハヤ
性別:
男性
職業:
専門学生
趣味:
音楽(主にサンホラ)・映画・漫画・ゲーム
自己紹介:
気分によって一人称が変わります、普段は『俺』や『私』ですが、時折、変化してます。

性格は基本的に大らかな性格のへたれです。

名前に関しては偽名です。
バーコード
ブログ内検索
カウンター