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西大陸グロッグ、シカンダ王国・・・そこに今一艘の船が港につく。
船から客が一人、また一人と降りてくる、その中に一人普通とは違う服装をした者がいた。
ゆったりとした服に大きな外套の様なコート、極めつけに羽根突き帽子。
明らかに他の人とは違う服装だった。
「・・・ふむ・・・ここが『シカンダ』ですか・・・。」
船から降り立った、異国の服をまとった男は周囲を見渡しながら呟く。
賑やかな港の雰囲気を体で感じ、男は心が高鳴るのを感じた。
「はてさて、ここではどんな『音』が聞けるのでしょう。」
大事な羽根突き帽子をクイッと上げ、綺麗な青空を見上げると太陽の眩しさに細めをさらに細めた。
「・・・さて、そろそろ行きましょうか。」
男は誰に話すわけでもなく呟き歩き始めた。
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「そろそろ昼時・・・ですね。」
軽鎧に身を包んだ騎士が執務室の窓から澄んだ青空を見上げて一人ごちた。
(・・・昼食がてら見回りもいいですね。)
「・・よし。」
少し時間を考慮した後、行くことに決めた。
だが、イスから立ち上がると、部下から声を掛けられた。
「あれ?お出かけですか、シルヴィー様?」
シルヴィー・ファランクス、それが騎士の名前である。
「ええ、昼食がてら見回りをしてきます、夕刻には戻ります。」
女性でありながら騎士隊長を勤める彼女は身だしなみを整えながら答えた
刀と脇差を腰に着けると、それは騎士というよりも侍のように見える。
「え、では、今日のおやつのカステラは私が頂いても良いですか!?」
溢れるよだれを拭いながら部下の青年騎士はシルヴィーに問い掛けた。
問い掛けられたシルヴィーはやや呆れたような表情をしている。
「・・・貴公は本当に甘い物に目がありませんね・・・ビル。」
「あはは、よく言われます。」
ビルは照れ笑いを浮かべる。
「構いません、好きなように処分してください。」
溜息混じりにシルヴィーがそう言うと
「よっしゃ、もうけ!!」
と、ビルは子どものように喜んだ。
そんなビルの様子を見ながら、ビルはまだ騎士に成りたてだったということを思い出した。
(私よりも2歳年下ですから・・・19ですか。)
ふとそんな事を考えていると、まだ一つ持ってない物があった事を思い出す。
シルヴィーは自分の机の引き出しから古びたハーモニカを取り出した。
「・・・それ、いつもお持ちですが大事な品なんですか?」
「ええ、とても。」
そう返しながら、ハーモニカを懐にしまい部屋を出ようとし
「あ、そういえば団長がお呼びでしたよ?」
「団長が?」
(・・・また・・・か・・・)
「報告ありがとう、では失礼します。」
シルヴィーは軽く会釈をし団長室へと足を向けた。
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・
『コンコン』
ノックの音が部屋に響き渡る、間を開けずに男の声が響く
「誰だ。」
「シカンダ王国 蘇芳騎士団 第六番隊 隊長、シルヴィー・ファランクスです。」
「シルヴィーか、入れ。」
「失礼します。」
シルヴィーが中に入り敬礼する。
その様子を部屋の主、騎士団長、ゼスカー・フォルスマンはイスに座りながら、嘗め回すような視線で見ていた。
「今回はどういった御用件ですか。」
シルヴィーはその視線を黙殺し、静かに聴いた。
「新しい『仕事』が入った、場所は東地区・スラム街だ、詳細はこれに記してある。」
そう言ってゼスカーは一枚の封筒を取り出した。
(・・・仕事・・・か・・・。)
シルヴィーは封筒を受け取ろうとし手を伸ばすと、封筒を受け取った瞬間に手首を掴まれ手前へと引っ張られた。
(っ!?)
ゼスカーは前か鏡になったシルヴィーに顔を近づけ耳の口を寄せる。
「・・・期待しているぞ?」
ゼスカーはそう囁き、ぬらり・・・とシルヴィーの耳朶を舐め上げた。
「――――――――っ!?」
シルヴィーは反射的に上体を起こし、間髪いれずに声を出す
「では、失礼しました。」
早急に告げると、部屋から逃げるように飛び出した。
・
・
・
「・・・っ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!」
シルヴィーは先ほど舐められた感触や首筋にかかる熱っぽい息などから来る嫌悪感を拭い去るため、耳から首筋にかけて腕でゴシゴシと擦る。
「・・・ちっ・・・。」
シルヴィーはこの国では有り得ない、母譲りである自慢の漆黒色の髪を手グシでサッと梳かし外へ出た。
『サァァァァァ・・・・』
そよ風が優しく頬を撫でる・・・その風に揺られるように、シルヴィーの長い黒髪がたなびいた。
その感覚にシルヴィーは、少しくすぐったがる様に目を細めた。
一幕 了
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性格は基本的に大らかな性格のへたれです。
名前に関しては偽名です。