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今回は多少暴力的表現があるので、カバーをさせていただきました。
お読みの際は反転してください。
(暑い・・・本当に蒸し暑い夏の夜・・・私は・・・はじめて人を殺しました・・・。)
シルヴィーはただ自分の身の安全の為に・・・生き残るために騎士団へと入った。
そして、そこでの身の保障を得るために、現・国家に異を唱える者を斬る仕事についた・・・。
無論・・・最初に人を切り殺した日を・・・その恐怖を忘れはしない・・・押しつぶされるような罪悪感を・・・。
――――――――――――――――無我夢中だった
相手の事を配慮するなんて微塵も出来なかった・・・。
ただ必死に、手にもった父と母の形見である刀を振り回し・・・激痛にのた打ち回る男に向かって振り降ろした・・・それをすれば・・・一体どうなるのかも分からずに・・・唯。唯、滅茶苦茶に刀を振り下ろした。
『バシュ!ジュグ!!ギヂィ!!!』
耳に障る、不快な音が夜の帳に響いた・・・。
だが、シルヴィーの耳には、その男の凄まじい悲鳴も不快な音も何も聞こえなかった・・・。
やがて・・・手汗で刀が自らの手から滑り落ち、大きな金属音を立てた。
その音にハッとするように、シルヴィーは我に帰った。
(わ・・・私・・・一体・・・何を・・・?)
呆然とその場に立ち尽くす・・・
次第に意識がハッキリしてくるにつれ、自分の足元に転がる『ナニカ』に気づいた
その『ナニカ』は動く事無く、ただ、生暖かい液体に浸っている。
(私は・・・何を・・・仕事をしろと言われて・・・知らない家に入って・・・刀を)
―――――――――――――――え?
何かに引っかかった。
刀を・・・どうした?
自分は刀をどうしたと言うのだ?
(刀を・・・振り回し・・・て?)
不意に目線が下に硬直する。
(ダメ・・・・ダメ・・・・)
本能がソレを見るなと警告する・・・だが、それと裏腹に瞳はそれを捉えて離しはしなかった。
足下に転がるナニカから目が話せない・・・
(これは・・・・これ、は――――――――――――――――)
「――――――――――――っっっ!!?」
理解した途端、強烈な嘔吐感が自分を襲った。
膝をつき胃の中にある物を全て吐き出した。
「~~~~ッッ!!グッゲホッ!うぇ・・・っ!!!」
吐き気は一向におさまらない、胃の中の物は何も無いと言うのに吐き出す動作を内臓が繰り返す。
足下に転がっていた物・・・・それは、つい今の今まで自らの手足で動き、自らの意思を持った一つの命を宿していた者・・・。
『ガチ・・・ガチガチガチ・・・!!』
手が・・・口が震え、歯が噛みあわず音を鳴らす。
(殺・・・した・・・わたしが・・・・この手で・・・)
ちらりと見やれば、無造作に転がる刀が目に入った。
(この刀で・・・殺・・した・・・!!)
刀を手に持ち胸に抱きこんだ。
(お母さん・・・お母さん、お母さん!!!)
形見である刀にすがり、ただ泣き続ける。
そうして震える中・・・シルヴィーの視界の端に丸い物を見つける・・・。
それは・・・『目』と言う人間のパーツ・・・。
そのパーツと目が合った瞬間・・・シルヴィーはそこから逃げ出した・・・・。
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あのときに比べたら、自分は人を斬ることが平気になったと感じる。
そして・・・自分の57番目のターゲット・・・それが、レイドの父親だった・・・。
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ターゲットは北方の国から来た子連れの男だった・・・。
シカンダ王国の新王に反旗を翻す為に動くレジスタンスに補給物資を届ける元締めである男だった。
この時点で、シルヴィーは人を殺すと言うことに慣れ始めていた・・・。
そう・・・慣れてしまった・・・。
はじめの頃は、殺した者達が化けて出てきて、逆に取り殺されると言う内容の夢に苛まれていたが・・・そう言ったことも殆んど無くなっていた。
そう・・・人は慣れる・・・例え、それがどんなことであろうとも・・・。
夜・・・シルヴィーは宿に忍び込み、護衛の者を使命を上げる間も無く気絶させ、中へと押し入った。
ターゲットである男・・・ハイドンは急に入ってきた闖入者に怯えた
それは、当然のことであろう・・・。
いきなり、刀を持った者が忍び込んできたのだから、驚かない方がおかしい。
ハイドンは壁にかけてあった剣を手に取り・・・・
『バシュ!!!』
その隙を突かれ、腕を切り落とされた
「がぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
悲鳴をあげてのた打ち回る・・・シルヴィーは一歩、また一歩と・・・止めを刺すために歩み寄る。
そして、ハイドンを殺そうと刀を再び構えたところで
「とう・・・さん・・・?」
「ッ、レイ・・・ド!!!」
後ろで、ハイドンの子どもが倒れるのをシルヴィーは見た。
大量の血を見たのだ・・・それが当然とシルヴィーは思った。
「っく・・・!!」
ハイドンはシルヴィーを睨みつけ、シルヴィーはそれを真っ向から受止める。
命乞いでもするのか・・・と思っていた・・・だが、それは見当ハズレだった。
「た・・・頼む・・・あの子を殺さないでくれ・・・!!」
「・・・え?」
この時、ようやくシルヴィーは人間らしい声を出した。
「あの子は・・・この仕事には関係無い・・・!!見逃してやってくれ・・・!!」
「・・・・。」
シルヴィーは応えない・・・見逃しても良い・・・だが、この国で子どもが一人で生きていけるはずが無い・・・ならば、いっそこの場で殺してやってほうが楽になる・・・とそう思っていた・・・だが、ハイドンは
「その子を・・・頼む・・・殺し屋に頼むなんて・・・おかしな事かも知れん・・・だが・・・その子は私の大切な一人息子なのだ・・・頼む・・・たの・・む!!」
倒れた子どもを見やる・・・
その幼き子どもを見ながら、自分を照らし合わせた・・・。
泣き叫ぶ自分・・・労苦の連続・・・生きるか死ぬかの世界・・・
(私は・・・自分と同じ存在を・・・)
自分が生きるために自分は自分と同じ目に・・・何人もの人を・・・子どもを不幸にしてしまっていた・・・。
その事実が、自分の心に深々と突き刺さった。
「頼む・・・たのむ・・・!!」
(・・・子どもに罪は無い・・・そう・・・これは私の・・・)
思えば、シルヴィーは自然と口を開いていた。
「・・・殺しはしません・・・貴方を殺した『罪』は私が背負います。」
「・・・・。」
ハイドンはその言葉を聞き、どこか安心したかのような目をした
「そ・・・う、か・・・・。」
呟き、事切れた。
「・・・。」
シルヴィーはそれを静かに見届けると、持っていた紙で刀の血を拭き取り鞘に収めると、レイドのもとへ歩み寄る。
(私が・・・この子を守ります・・・この子は・・・私の・・・。)
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そうして、シルヴィーの家にレイドが来た。
レイドが起き、すこし落ち着かせたところで、全てを話した・・・。
自分の仕事、殺した訳、ココに連れてきた理由・・・その全てを。
レイドは以外にも冷静だった・・・年の割りに成熟してるのか・・・はたまた我慢をしてるだけか・・・。
しかし、レイドは自分を許さないと言った・・・父のために生きて、そして、父を殺した自分を許さないと静かに・・・しかし強く言った・・・。
次に、ウィルが来た。
ウィルの母親は亡国の間者であり、自分以外にも様々な暗殺者に狙われている存在だった。
そのウィルの母親を、一切の油断無く、シルヴィーは斬り伏せた・・・その姿を、自分の後ろに隠れてついてきたレイドも見ていた・・・。
レイドは自分を見届けると言った・・・いつか誰かに殺されるのを・・・見届けると、そう言った。
その後、その部屋に自分と同じく、女性を殺しに来た暗殺者が来た・・・一家そのものを殺せと命令されたのだろう、その暗殺者はすぐ傍で眠っているウィルを殺そうとした・・・。
自分は・・・その暗殺者を切り殺した。
その行動に驚いたウィルは、思わず自分に聞いてきた・・・。
「なんで・・・。」
自分は正直に応えた・・・ありのままの自分の心を。
「この子は・・・私の【 】ですから・・・。」
レイドはそれを聞いて暫く黙りこくった・・・やがて、顔を上げるとレイドは口を開いた。
「・・・貴女を決して僕は赦さない・・・けど、貴女がそうやって背負いながら生き続けるのなら・・・僕は・・・」
その言葉を聞いた・・・自分の事をまっすぐに見ながら、レイドは・・・
「 。」
そして・・・その時改めて誓った。
この子達を・・・まもりつづけよう・・・と。
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最後の一口、お茶をすする。
(・・・さて、見回りの時間です。)
食器を洗い、シルヴィーは外へ出た。
第八幕 了
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性格は基本的に大らかな性格のへたれです。
名前に関しては偽名です。